配偶者の浮気相手には慰謝料を請求することが可能(※)です。
※判例上不法行為に該当するため配偶者や不倫相手に対して損害賠償請求(慰謝料請求)が可能です(民法第709条、第710条)。
参考サイト: 不貞慰謝料が発生する法律上の根拠(弁護士サイト)
しかし、弁護士を雇って示談、裁判とかは面倒そうで気後れする方も多いと思います。
そもそも相場はどれくらいなのか、高く取るコツはあるのかなども気になります。
こうした問題についてまとめました。
一番最初に最も基本的なことを確認しておきます。
ここに誤解があると後の話が全部狂ってきますので。
慰謝料が請求できるのは、法律でいうところの「不貞行為」に対してです。
早い話が継続的な肉体関係を伴う浮気のことです。
「不貞行為が不法行為に該当するから損害賠償請求できる」というのが法律上の根拠なので、不貞行為がなければそもそも話が変わってきます。
・・・などという人もいらっしゃいます。
個人の浮気観は自由ですが、それらは法律上の不貞行為ではありません。
その程度では慰謝料請求はできないのです。
【不貞行為の証拠】
そして法律行為ですから、当然ながら証拠も必要です。
といっても、性行為の写真や動画を合法的に入手できるケースはまずないです。
そこで性行為を推定できる証拠が採用されてきました。
具体的にはラブホ出入りなどの写真。
探偵に浮気調査を頼むと撮って来てくれるような写真です。
昭和の昔から今に至るまでこの種の写真が不貞行為の証拠として法律の世界で認められてきました。
LINEの濃厚なやりとりなどは、証拠能力ゼロではないが単独では弱いです。
「ふざけて恋人ごっこをしただけ」という言い訳も可能です。
強力なメインの証拠がある時に補助的証拠として認められる程度だと思ってください。
配偶者の愛人に請求できることは誰でも知っていますが、配偶者本人にも請求できます。
そして配偶者と愛人の両方にも請求できます。
といっても請求金額を2倍にできるわけではないです。
どちらにいくら請求するかは処罰感情や相手の支払い能力を考慮しながら、法律家に相談して決めればよいでしょう。
配偶者を対象にするかどうかは、離婚するかどうかが鍵になる事が多いです。
離婚しないなら、慰謝料を請求しても夫婦間でお金が移動するだけに終わります。
ほとんどの夫婦は生計をともにしているし、金額も一般的にはせいぜい数百万円以下なので、離婚しないなら意味が薄いです。
両方に請求すると法的な手続きも煩雑化することは理解しておく必要があります。
弁護士の中には「初回は脅しに留めるのがよい」と指導される方もいらっしゃいます。
慰謝料は請求せず、「二度と会わない。もし約束を破ったら違約金を払う。」旨の合意書を書かせるわけです。
しかし、以前に取材した大手探偵事務所の有名な女性社長は「再燃を防ぐためにしっかり痛みを味わわせるべき」とおっしゃっていました。
浮気調査で浮気が発覚し、いったんは別れた相手と再燃するというのは非常に「あるある」だそうです。
関係回復を目指すなら、火元の徹底鎮火もしておかねば片手落ちというもの。
例えば、相手が収入も少ない若い小娘なら、100万円とか50万円レベルの請求でも心底こたえて懲りるはずです。
このように痛みを与えないと時間とともに知恵をつけて図太くなり、また関係を持つようになるそうです。
そんな金額では浮気調査の費用と弁護士費用を差し引けば赤字でしょうが、狙いはお金だけではないということです。
一聴に値する意見ですね。
この場合、一番の目的は浮気再燃防止であって、慰謝料はその費用の足しと捉えればいいわけです。
お金の話が出たところで気になる慰謝料の相場を見てみましょう。
金額に関する法の規定はなく、慣習や判例に基づく決定がなされています。
弁護士が運営するサイトを検索すると、一般には50~300万円程度といった回答が載っています。
しかし、下記のような判例の専門書を紐解くと、何百万円も取れている事例はそんなに多くないことがわかります。
【「不貞慰謝料請求の実務」 中里和伸著 LABO刊】
慰謝料は実は裁判まで行ってしまうとその程度なのです。
芸能人・有名人の離婚では「慰謝料は億単位」といった報道が出ることがありますが、しばしば財産分与とごっちゃになっています。
婚姻期間に二人で築いた財産を離婚時に分け合う財産分与は、慰謝料とはまた別の話なので注意してください。
では、慰謝料は300万円が天井なのかというとそれも間違いで、天井はありません。
慰謝料を高く取るには、裁判まで行かずに示談の段階で決着させることが重要です。
これは先述の女性探偵社経営者も強調されていました。
相手にそれだけ払っても解決したい気持ちがあり、実際に支払い能力があれば上限額はありません。
どうしても解決したい事情とタイミングを見極めることが重要なのです。
あなたの夫と愛人女性が下記の4条件のもとにある場合を想定してみてください。
早く離婚を成立させて再婚しないと、出産の時期を迎えて相手の両親の希望に反してしまいます。
支払い能力もありますから、相場より高い慰謝料を払っても早く解決したいと考えるでしょう。
弁護士に相談するにしても上記のような実情をよく知っていて経験豊富な方に依頼しないといけません。
でないとタイミングと判断を誤り、安い金額しか取れずに終わります。
頭が固くて交渉力に長けていない先生は、法律の条文ばかり並べたて判例にばかりこだわります。
真面目ながり勉で生きてきたため、示談の駆け引きがわかりません。
そして相手の弁護士と話し合って判例水準の低い金額で妥結してしまいます。
弁護士には、慰謝料請求や離婚問題の専門とか別途資格とかはありません。
弁護士資格を持っていれば、離婚でも慰謝料でも交通事故でも相続でも民事でも刑事でも、すべての法律問題を扱えるのです。法律上は。
しかし、現実には各分野の経験と実践的な知識がないと、依頼者に本当に有利な采配ができるはずがないと思います。
この意味から、慰謝料や離婚問題に詳しい弁護士と提携しているかどうかは探偵社選びのひとつの大きなポイントになります。
この点については、弁護士先生の中でもいろいろな意見があります。
ある先生は「弁護士に専門分野などない」と言い切ります。
ある先生は、一部の分野は専門性が強く、どの弁護士でもできるものではないと言います。
しかし、もっと卑近な法律問題でも経験は大きな価値を持つのではないでしょうか?
例えば債務整理。
借り入れ状況を読むとどうみてももっといい解決策があったのに、弁護士に自己破産を選ばされた人の体験記を読んだことがあります。
不倫慰謝料もそうでしょう?
「裁判まで行かずに示談でカタをつけるのが慰謝料を高く取るコツ」というのは、司法試験には出ません。
よく知らない先生は判例を調べて、すぐその水準で妥結してしまうと聞きます。
相手の足元を見た泥臭い交渉でより高い示談金を引き出すのも、法律のお勉強とは別のセンスやスキルだと思うのです。
やはり法律だけでなく、その問題の現実をよく知っている先生を探すべきだというのが、当サイト管理人の意見です。